「認知症でも入れる施設」で調べると、グループホーム、特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホームと種類が並びます。ひととおり読んでも、それでうちの親はどれなのか、というところで止まってしまう。そんな経験はないでしょうか。
止まる理由ははっきりしています。多くの記事が要介護度で施設を切り分けているからです。ところが認知症の場合、要介護度だけでは受け入れの可否が決まりません。同じ要介護度でも、認知症の症状の出方と施設側の体制によって判断が分かれます。
認知症には、要介護度とは別に、状態を表す公的なものさしがあります。この記事では、そのものさしと確かめ方、そして状態によって選べる施設がどう変わるかをご説明します。

結論|要介護度より先に、認知症の状態を確かめると候補が絞れます
要介護度は、施設を探す入口としては分かりやすい数字です。ただ認知症については、その数字が実態と噛み合わないことがあります。
先に確かめておきたいのは、認知症の症状がどの程度、どんな場面で出ているかです。これには「認知症高齢者の日常生活自立度」という区分があり、要介護認定の書類に記載されています。ご家族が印象で判断するものではありません。
いつ入居を検討すべきかについては、これが正解という時期はありません。ただ状態を言葉にしておくと、相談を始めるかどうかの判断もしやすくなります。
なぜ、要介護度だけでは決まらないのでしょうか
介護保険法は、要介護状態を「その介護の必要の程度に応じて」区分すると定めています。要介護度が表しているのは、介護にどれだけ手がかかるかです。
認知症の症状は、この尺度と一致するとは限りません。体は元気で身の回りのことができる方でも、火を消し忘れることや、外出して戻れなくなることがあれば、見守りの体制が要ります。反対に、介助に手がかかる方でも、症状の出方によって求められる体制は変わります。要介護度が同じでも、受け入れられるかどうかは、具体的な状態と施設の体制を照らし合わせないと分かりません。
制度の側もそのことを織り込んでいます。特別養護老人ホームは原則として要介護3以上が対象ですが、要介護1・2の方が申し込める「特例入所」の仕組みがあり、厚生労働省の指針は、その判断で考慮する事情の第一に次を挙げています。
認知症である者であって、日常生活に支障を来すような症状・行動や意思疎通の困難さが頻繁に見られること
要介護度ではなく、認知症の状態を表す言葉で書かれています。ここで使われている言い回しは、次にご説明する区分と重なります。
認知症の状態を表す、公的なものさしがあります
認知症高齢者の日常生活自立度
厚生省(当時)が平成5年の通知で示した判定基準で、いまも要介護認定で使われています。
| ランク | 判定基準 |
|---|---|
| Ⅰ | 何らかの認知症を有するが、日常生活は家庭内及び社会的にほぼ自立している。 |
| Ⅱ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが多少見られても、誰かが注意していれば自立できる。 |
| Ⅱa | 家庭外で上記Ⅱの状態が見られる。 |
| Ⅱb | 家庭内でも上記Ⅱの状態が見られる。 |
| Ⅲ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さがときどき見られ、介護を必要とする。 |
| Ⅲa | 日中を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 |
| Ⅲb | 夜間を中心として上記Ⅲの状態が見られる。 |
| Ⅳ | 日常生活に支障を来すような症状・行動や意志疎通の困難さが頻繁に見られ、常に介護を必要とする。 |
| M | 著しい精神症状や問題行動あるいは重篤な身体疾患が見られ、専門医療を必要とする。 |
この判定基準には「見られる症状・行動の例」も添えられています。ランクⅡaの例として挙げられているのは、たびたび道に迷う、買い物や事務、金銭管理などそれまでできたことにミスが目立つ、といったこと。ランクⅡbでは、服薬管理ができない、電話の対応や訪問者との対応、ひとりでの留守番ができない。ご家族が「そういえば」と思い当たることがあるかもしれません。
ランクⅢ以降の例には、着替えや食事、排泄に手がかかるようになる、ひとりで外に出て戻れなくなる、大きな声を出す、火の始末ができない、といったことが並びます。ランクⅢaとⅢbを分けているのは、それが日中に見られるか、夜間に見られるかの違いです。夜間の見守りが必要かどうかで施設の探し方が変わりますので、ここは分けて考えてください。
先ほどの特例入所の要件と、ランクⅣの判定基準を並べてみてください。ほぼ同じ言葉が使われています。制度が認知症の重さを何で測っているかが、ここに表れています。
どこで確認できるのでしょうか
自立度は、ご家族が判定するものではありません。要介護認定の過程で記載されます。
認定調査票には「認知症高齢者の日常生活自立度」という欄があり、自立・Ⅰ・Ⅱa・Ⅱb・Ⅲa・Ⅲb・Ⅳ・Mから一つを選ぶようになっています。主治医意見書にも同じ欄があります。どちらも厚生労働省が様式を定めているものです。
確かめ方はいくつかあります。担当のケアマネジャーがついていれば、まず尋ねてみてください。枚方市には「要支援・要介護認定に係る情報提供申出書」があり、本人・家族・ケアマネジャー・地域包括支援センターの職員が申請できるとされています。どこまでの情報を受け取れるかは、介護認定給付課(072-841-1460)にお問い合わせください。
まだ要介護認定を受けていない場合は、まず認定の申請からになります。窓口はお住まいの地域包括支援センター、または市町村の担当課です。
施設に伝えるときは、主治医意見書の項目に沿って
施設に問い合わせるとき、「認知症があります」だけでは、受け入れられるかどうかの返事はもらいにくいと思います。施設の側も、それだけでは判断のしようがありません。
そこで使えるのが、主治医意見書の項目です。認知症については3つに分けて記載するようになっています。
- 中核症状 短期記憶、日常の意思決定を行うための認知能力、自分の意思の伝達能力の3項目
- 行動・心理症状(BPSD) 幻視・幻聴、妄想、昼夜逆転など11の項目と「その他」の欄
- その他の精神・神経症状
この並びに沿って、どの症状が、いつ、どの程度出ているかをお伝えください。公的な様式に沿うことで、伝える項目を一から考えずに整理できます。
ご本人の状態をどうお伝えすればよいか決めかねている段階でも、ご相談いただいてかまいません。
状態によって、選べる施設が変わります
施設の種類そのものの違いは老人ホームの選び方で整理しています。ここでは、認知症という条件が加わると何が変わるかだけをご説明します。
グループホーム|認知症に特化していますが、市町村の制約があります
介護保険法は認知症対応型共同生活介護(グループホーム)を、要介護の認定を受けた認知症の方について、共同生活を営む住居で介護や機能訓練をおこなうものと定めています。認知症の原因となる疾患が急性の状態にある方は対象から除かれます。少人数で暮らす形が特徴です。要支援の方を対象とする介護予防のサービスもありますが、こちらは対象となる区分が限られます。
職員の配置は省令で決まっています。共同生活住居ごとに、日中は常勤換算で利用者3人またはその端数ごとに1人以上、夜間・深夜は勤務する職員が1人以上になる人数を確保することとされています。常勤換算というのは、勤務時間を積み上げて常勤の職員が何人分にあたるかを計算する方法ですので、その時間帯に常時その人数がいるという意味ではありません。それでも、こうした下限が制度として置かれていること自体が、あとで述べる住宅型との大きな違いです。
ただし制約があります。グループホームは地域密着型サービスに位置づけられており、介護保険法は、市町村長がおこなう指定について、その市町村がおこなう介護保険の被保険者に対する給付に効力を持つと定めています。原則として、その市町村にお住まいの方が対象ということです。枚方市にお住まいなら、原則として枚方市内のグループホームが候補になります。
市町村どうしの同意によって区域外の事業所が指定される例外もありますが、限られます。気になる施設が市外にあるときは、利用できるかどうかを先に確かめてください。
特別養護老人ホーム|要介護3未満でも、申し込める場合があります
原則は要介護3以上です。ただ先ほどの特例入所があり、要介護1・2の方でも認知症の状態によっては対象になります。
厚生労働省の指針は、申込者側から特例入所の要件に該当する旨の申立てがある場合に、申込みを受け付けない取扱いは認めないとしています。該当するかどうかは施設が判断し、保険者である市町村に報告するとともに、判断にあたっては適宜その意見を求めることとされています。
要介護2だから特養は無理だと、最初から外す必要はありません。
住宅型有料老人ホーム|運営・人員基準がないぶん、施設ごとの差が残ります
住宅型については、まず制度の作りを知っておいてください。
厚生労働省が2026年8月5日の社会保障審議会介護給付費分科会(第262回)に提出した資料には、住宅型有料老人ホームについて「運営・人員基準なし(ガイドラインのみ)」と明記されています。介護付きホームやグループホームのような職員配置の下限が、制度として存在しません。
有料老人ホームには設置運営標準指導指針がありますが、これは都道府県などに対する技術的な助言として示されているもので、人員基準ではありません。認知症の受け入れについて「施設によって違います」と説明されることが多いのは、この作りに理由があります。
ですから確かめ方も変わります。職員の人数を聞くときは、ホームの職員か、外部の訪問介護事業所の職員かを分けて尋ねてください(指導指針も、重要事項説明書の職員数に訪問介護事業所などの勤務時間を重複して計上することは不当表示となるおそれがある、と指摘しています)。
ご本人の症状が夜間に出やすい場合は、夜間の体制が分かれ目になります。夜間に館内に何人いるのか、そのうちホームの職員は何人か。自立度でランクⅢaとⅢbが分けられているのは、症状が日中に見られるか夜間に見られるかの違いですので、ここを確かめておくと施設側にも状況が伝わります。

住宅型の仕組みそのものは住宅型有料老人ホームとは?費用・サービス・入居条件をやさしく解説、費用や生活面の判断材料は住宅型有料老人ホームのメリット・デメリットでご説明しています。
「退去させられませんか」という不安について
認知症について調べていると、症状が進んだら退去を求められる、という記述をよく見かけます。ご心配になるところだと思います。
ここは契約と書面で確かめられます。厚生労働省の指導指針は、入居契約書に定める設置者側の契約解除の条件について、次のように求めています。
入居契約書に定める設置者の契約解除の条件は、信頼関係を著しく害する場合に限るなど入居者の権利を不当に狭めるものとなっていないこと。
さらに指導指針は、入居者が一定の要介護状態になったことを理由として契約を解除する契約の場合や、介護居室の入居者の心身の状況に著しい変化があって介護居室を変更する契約の場合について、次の手続を含む一連の手続を、入居契約書または管理規程に明らかにしておくよう求めています。
- 医師の意見を聴くこと
- 本人または身元引受人等の同意を得ること
- 一定の観察期間を設けること
尋ねるべきは「退去になりますか」ではありません。入居契約書と管理規程に、解除の条件と手続がどう書かれているかです。その書かれ方に、施設の考え方が表れます。
契約の前に書面を求めることをためらう必要はありません。あわせて重要事項説明書にも目を通しておくと、施設の輪郭がつかめます。枚方市は市内の有料老人ホームの一覧と施設ごとの重要事項説明書をホームページで公開していますので、見学の前に読んでおけます。ただし掲載されている版は基準日が古いことがあり、市のページにも、最新のものは各施設に問い合わせるよう案内があります。最新版の受け取り方は老人ホーム見学のチェックポイントでご説明しています。
よくある質問
認知症の診断はまだありませんが、相談してもよいですか。 かまいません。ただグループホームは認知症のある要介護の方が対象で(要支援の方は対象となる区分が限られます)、特別養護老人ホームも要介護の認定が前提になります。この2つを候補に入れるなら、要介護認定の申請が要ります。もの忘れが気になる段階のご相談は、お住まいの地域包括支援センターやかかりつけの医師にお願いします。
本人に施設のことをどう伝えればよいでしょうか。 決まった手順はありません。ひとつの手がかりとして、認知症基本法は基本理念に「認知症の人の意向を十分に尊重しつつ、良質かつ適切な保健医療サービス及び福祉サービスが切れ目なく提供されること」を掲げています。ご家族だけで決めて後から伝えるより、見学に一緒に行っていただくなど、決める過程にご本人が関わる形を探してみてください。
症状が進んだら、また移らなければなりませんか。 状態の変化にどこまで対応できるかは、施設の職員体制と、外部の医療・介護との連携の内容によります。医療的な管理が必要になった場合の仕組みは住宅型有料老人ホームでも24時間看護は可能?訪問看護との連携の仕組みでご説明しています。入居の前に、どこまで対応できて、どこからが難しいのかを、書面と合わせて確かめておいてください。

まとめ
認知症の施設選びは、施設の種類を調べるより先に、ご本人の状態を言葉にするところから始めると進みやすくなります。
認知症高齢者の日常生活自立度は、要介護認定の認定調査票と主治医意見書に記載されます。担当のケアマネジャーに尋ねるほか、情報提供申出書の利用については枚方市の介護認定給付課へお問い合わせください。施設に伝えるときは、主治医意見書の項目に沿って、どの症状がいつ出ているかをお伝えください。
そのうえで、グループホームは原則として市町村内の事業所が対象になること、特別養護老人ホームは要介護1・2でも特例入所の道があること、住宅型は運営・人員基準がないぶん施設ごとに確かめる必要があること。この3点を押さえておくと、候補の絞り方が変わってきます。退去の条件についても、入居契約書と管理規程の書かれ方で確かめられます。
メディケア結枚方は、枚方市の住宅型有料老人ホームです。ご本人の状態をどうお伝えすればよいか決めかねている段階でも、ご相談いただけます。
参考・出典
- 厚生労働省「『認知症高齢者の日常生活自立度判定基準』の活用について」(平成5年10月26日 老健第135号)/判定基準の全文は厚生労働省資料に収載 https://www.mhlw.go.jp/topics/2013/02/dl/tp0215-11-11d.pdf
- 厚生労働省「介護情報の各様式」(認定調査票・主治医意見書) https://www.mhlw.go.jp/content/12301000/001043220.pdf
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設等の入所に関する指針について」(平成26年12月12日 老高発第1212001号) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc0609&dataType=1&pageNo=1
- 厚生労働省 老健局「高齢者住まいに対するサービス提供の在り方」(社会保障審議会-介護給付費分科会 第262回 資料2、令和8年8月5日) https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001733554.pdf
- 厚生労働省「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(平成14年7月18日 老発第0718003号、令和6年12月6日最終改正) https://www.mhlw.go.jp/content/001347957.pdf
- 介護保険法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/418M60000100034
- 共生社会の実現を推進するための認知症基本法(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC1000000065
- 枚方市「介護保険に関する申請書等様式」 https://www.city.hirakata.osaka.jp/kourei/0000023090.html
- 枚方市「枚方市有料老人ホームの一覧及び重要事項説明書」 https://www.city.hirakata.osaka.jp/0000010554.html